なおりにくい肩こりや冷え性、もしかして「かくれ貧血」が原因かも?
- ヘルスケア
貧血といえば、立ちくらみやめまいなどの症状を思い浮かべがちですが、冷えや便秘、朝起きるのがつらいといった一見誰もが抱えているような不調も、もしかしたら鉄分不足が関係しているかもしれません。
「私は健康診断で貧血を指摘されたことがないから無関係」と思いがちですが、一般的な健康診断で用いられる赤血球やヘモグロビンの血液検査ではわからない「かくれ貧血」をご存じですか?
気づかずに放置すると慢性疲労状態となり、うつ病や更年期症状と間違われることもあるかくれ貧血。ここでは、かくれ貧血とは何か、その原因や、鉄分を効率良く摂取する方法などについてご紹介します。
普通の貧血とかくれ貧血、どう違うの?
一般的な貧血の80~90%を占めるのが、鉄分が不足して起こる「鉄欠乏症貧血」といわれています。月経のある女性には特に多く、健康診断に含まれるヘモグロビン検査でわかるため、発見・治療しやすいのも特徴です。
ヘモグロビンには、酸素を体の隅々まで届ける働きがあります。そのヘモグロビンの原料となるのが、鉄分です。体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンが減少するだけでなく、赤血球自体のサイズも小さくなってしまいます。その結果、酸素が体内に行き渡らない状態となり、貧血になってしまうのです。
では、かくれ貧血はどう違うのでしょうか?体内にある鉄は、6〜7割がヘモグロビンの成分として血液中に存在し、残りの一部は肝臓や脊髄などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。鉄分が不足すると、一時的に体内の貯蔵鉄から鉄不足を補うようにできています。この貯蔵鉄が利用され、少なくなる状態が、かくれ貧血(潜在性鉄欠乏)です。やがて貯蔵鉄からの供給も間に合わなくなると血液中の鉄が不足して、最終的に酸素を運ぶ重要な赤血球の鉄も不足し、本当の貧血になるのです。
つまり、かくれ貧血とは貧血になる一歩手前で、酸素が行き渡りづらくなった体が慢性疲労をはじめとするSOS信号を発信している状態。赤血球やヘモグロビン値が一見正常にみえても、それは体がなんとか貯蔵鉄から鉄を補っているだけで、めまいや立ちくらみのようなわかりやすい貧血症状は出ていないけれど、頭痛や肩こり、肌荒れや不眠などの原因不明の不調には長年悩まされている、ということがあり得るのです。
どうしたらかくれ貧血がわかる?
かくれ貧血は、血液検査のフェリチンという項目から判断します。フェリチン値は体内の貯蔵鉄量と相関しています。普通の血液検査ではフェリチン値を調べないため、ヘモグロビンが減る本当の貧血にまで至っていない場合、かくれ貧血を見逃してしまうのです。一般的な健康診断には含まれていないため、オプション検査として追加するか、内科を受診してフェリチン検査を含む貧血検査をしてみると良いでしょう。
鉄分不足になる3つの理由
貧血が起きてしまう場合、大きく分けて次の3つの理由が考えられます。
① 食事からの鉄分摂取不足
1日に排出される量は少ないものの、鉄は体内への吸収率が低い栄養素であり、食べ物に含まれる鉄のうち約8~10%しか吸収されません。そのため、偏った食事をしていたり、ダイエットなどで食事の量を極端に減らしたりすると、鉄の摂取量が不足しがちになってしまいます。
②妊娠中や授乳期などの鉄分需要の増加
妊娠すると、おなかの中の赤ちゃんを育てるために、母体の鉄は胎盤を通じて胎児に移行します。また、母乳の中にも鉄が含まれているため、授乳によっても鉄は失われてしまいます。
③月経、子宮筋腫などによる出血過多
女性は、月経によっても鉄が体外に排出されます。特に、経血量の多い「過多月経」は、貧血を引き起こす原因のひとつです。このほか、子宮筋腫や子宮内膜症、痔などの疾患によって慢性的に出血が起こり、鉄分不足に陥るケースもあります。
貧血、かくれ貧血と診断されたら
貧血が起こる原因は多岐にわたるため、まずは貧血を引き起こしている原因を特定することが重要です。子宮筋腫などの疾患による貧血の場合は、適切な治療を行うことで、その疾患と一緒に貧血も改善されやすくなります。栄養バランスの偏りが原因で起きた場合は、鉄分・ビタミン補給を行います。鉄剤を服用してから1~2週間経過すると、ヘモグロビンの量が増えていきます。しかし途中で服用をやめると、再度貧血を引き起こしやすくなるため、最低3~4か月は断薬せずに継続しましょう。
日ごろから貧血を予防するには、赤血球・ヘモグロビン生成に必要な鉄・亜鉛・葉酸・ビタミンB12が摂れる食事を心がけましょう。特に月経のある女性は、日々の食事だけで十分な鉄を補うことが難しいため、サプリメントも上手く活用すると良いでしょう。
疲れやだるさといった日々のちょっとした不調を「年齢のせい」と考える人も少なくありません。しかし、体内の鉄分不足による貧血が、それらの症状を引き起こしている可能性もあります。
貧血の陰には重大な病気が隠れていることもあるため、体のだるさが続いたり、動悸や息切れが頻繁に起こったりするなど、気になる症状があれば、必ず医師に相談するようにしましょう。