一般的な貧血の80~90%を占めるのが、鉄分が不足して起こる「鉄欠乏症貧血」といわれています。月経のある女性には特に多く、健康診断に含まれるヘモグロビン検査でわかるため、発見・治療しやすいのも特徴です。
ヘモグロビンには、酸素を体の隅々まで届ける働きがあります。そのヘモグロビンの原料となるのが、鉄分です。体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンが減少するだけでなく、赤血球自体のサイズも小さくなってしまいます。その結果、酸素が体内に行き渡らない状態となり、貧血になってしまうのです。
では、かくれ貧血はどう違うのでしょうか?体内にある鉄は、6〜7割がヘモグロビンの成分として血液中に存在し、残りの一部は肝臓や脊髄などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。鉄分が不足すると、一時的に体内の貯蔵鉄から鉄不足を補うようにできています。この貯蔵鉄が利用され、少なくなる状態が、かくれ貧血(潜在性鉄欠乏)です。やがて貯蔵鉄からの供給も間に合わなくなると血液中の鉄が不足して、最終的に酸素を運ぶ重要な赤血球の鉄も不足し、本当の貧血になるのです。
つまり、かくれ貧血とは貧血になる一歩手前で、酸素が行き渡りづらくなった体が慢性疲労をはじめとするSOS信号を発信している状態。赤血球やヘモグロビン値が一見正常にみえても、それは体がなんとか貯蔵鉄から鉄を補っているだけで、めまいや立ちくらみのようなわかりやすい貧血症状は出ていないけれど、頭痛や肩こり、肌荒れや不眠などの原因不明の不調には長年悩まされている、ということがあり得るのです。